大学評価京都宣言=もう一つの「大学評価」宣言

 わたしたちは本日、大学のまち京都に集い、大学評価学会の設立に向けて、議論を深めました。
本学会設立に至る直接的な契機は、学校教育法の一部改定(2002年11月)によって、この4月1日より、文部科学省によって認証された評価機関による大学評価が法的に義務づけられるようになったことです。大学評価は、教育や研究のありように直結しており、学問の自由、そしてそれを制度化したものである大学の自治の根幹に関わるものです。
 日本において、現在すすめられているさまざまな大学評価は、経済的視点が一面的に強調されています。今まさに始まろうとしている認証評価機関による「第三者評価」でもこの視点はいっそう強まっており、大学評価本来のありようについての議論は軽視されているのです。
この4月1日から発足する国立大学法人に対しては、さまざまな機関(文部科学省、総務省、総合科学技術会議、外部委託機関等)による評価が行われることが決まっています。既に行われている大学評価・学位授与機構の評価結果にはさまざまな批判も出ています。評価の在り方を真摯に捉え直すことが求められています。
 今まさに大学評価の具体的ありようをめぐって議論する場の必要性が切望されています。高等教育機関はこれまで人類の発展にとって重要な貢献をしてきましたし、今日においてよりいっそう積極的な役割を果たすことが期待されています。一方、今日の大学・短期大学においてさまざまな問題があることは事実であり、大学人の自浄能力が発揮されなければなりません。
 わたしたちは、「第三者評価」の法的義務づけを、大学・短期大学という高等教育機関のありようを考える契機として、真摯に受け止めたいと思います。これまで狭い専門の領域に閉じこもりがちであった教育・研究者と事務職員、そして大学が、自らの主体性を確立し、学問の自由と大学の自治の現実的・具体的担い手となるために、大学評価に関する議論を行うことは避けて通れない課題となっていると言えるでしょう。
 高等教育機関は、政府や産業界など特定の者のためだけに存在するのではありません。公共的な存在として、すべての市民のために存在しているのです。学生たちの学びの成果は彼ら自身の成果であるだけでなく、社会全体の貴重な成果として認識されなければなりません。このような視点から、大学評価の基本に、学生の発達保障が明確に位置づけられる必要があるでしょう。
 今日、大学評価は、大学が社会的役割・貢献を行っていく上で必須条件となっています。社会的役割・貢献は、経済的のみならず社会的な広がりをもった多様で多元的な価値視点から求められるものです。この多様で多元的な視点から大学評価を行うことが必要となっているのです。
 わたしたちは、本日の議論を通じて、次の点を確認しました。
1.本学会は、「大学評価」そのものを相対化し、学問的検討の対象とするため、大学評価学(論)という分野を設けます。これは、従来からの大学論、高等教育論と重なるとともに、独自に評価という視点から大学を論ずることを学会の目的とするということです。
2.本学会は、設置形態、教学内容、規模、立地など、それぞれの大学・短期大学が持つ多様性を考慮した大学評価を行い、高等教育研究機関の発展に貢献していきます。
3.本学会は、教育・研究者と事務職員だけでなく、法人理事・監事やさらには広く市民の方々に参加をよびかけ、大学評価についての研究を深めていきます。同時に、現代社会が直面する諸課題の解決に資する高等教育研究機関を創造する営みをすすめていきます。

                 2004年3月28日   大学評価学会設立大会