戒能民江副代表の挨拶文は、編集上の都合により、とりあえずホームページ上にて掲載いたします。また、次号『学会通信3号』にも掲載いたします。

大学評価学会への期待

大学評価学会副代表 戒能民江

 本年3月に発足した大学評価学会の活動も、お二人の代表ならびに事務局の方がたの献身的なご努力によって、軌道に乗りつつあるようだ。こころから祝福したい。
先日、はじめて学会活動に参加したが、改めて大学評価学会の意義と社会的役割の大きさを痛感させられた。
 国立大学法人化を機に、私の勤務校でも早速「総合評価室」が設置され、第三者評価にそなえた準備作業が進められている。同時に、第三者評価への準備として、自己点検・自己評価の重要性が部局などの組織と個人の両方のレベルで、ことあるごとに強調されている。しかし、問題は何のための評価かということと、評価の視点である。現場では、大学評価のありようについての具体的議論がほとんど欠如したまま、大学評価ありきでことは進行しているといってよい。
 この数年、国立大学は、展望の見えないまま中期目標作成などに振りまわされてきた。しかし、たどりついた先にはっきり見えてきたのは、トップダウンと競争原理の強化である。当然のごとく学生はかやの外に押し出され、教員や職員も、ものを言いにくい状況にじわじわと追い込まれていくような気配すらある。教育研究についての未来像を十分に語れぬまま、評価のための「実績づくり」や競争に追い立てられ、いつの間にか「泥船」にしがみついていたという事態を想像するのは杞憂であろうか。大学評価がこのような状況を加速させるものとなってはならない。むしろ、逆に大学評価は大学再生・活性化の源であるはずだ。
 他方、私たちは、大学の自浄能力のなさや閉鎖性、大学自治の空洞化をも直視すべきだろう。この10年あまり、キャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワークの活動にかかわってきて感じるのは、ジェンダー・バイアスの強さはもちろんのこと、大学はかなり歪んだ世界であるということだ。大学の体質を変えることは容易ではないだろうが、大学内外のさまざまな立場の人びととともに真剣な議論を行っていく必要がある。
 大学評価学会が今後いっそう多角的な学会活動を展開し、大学改革のための「風」を巻き起こすことを期待したい。

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