本書は、現在、大学で進行しているPDCAサイクルをめぐって、そこでの3つの誤読を論じている。第一は大学と企業における質の違い(教育過程とものづくり過程の質の違い)における誤読であり、第二は企業経営におけるものづくりにおけるPDCAサイクルの本質理解における誤読であり、第三はPDCAサイクルに組み込まれている目標管理の概念理解における誤読である。これらの誤読によって、大学改革・大学評価において安易なPDCAサイクルの導入がなされ、議論もないままに当然のごとく大学・大学人が受容することになってしまっている。この3つの誤読から脱却し、新たな評価活動の具体的なあり方の提案を行う必要がある。それは一言で表現するならばサイクル過程からコミュニケーション過程への転換である。
このためにも、まずPDCAサイクルおよびそれに組み込まれた目標管理の誤読から生まれる現状認識とそこでの混乱を正し整理する必要がある。用語、概念は正しく使用されるべきである。そうでなければ、議論は徒労に終わり、また無用な混乱をもたらすことになってしまう。さらには自分たちの置かれている立場・状況が見えなくなってもしまう。大学改革・大学評価におけるPDCAサイクルの実際の導入・進行を目の当たりにし、この感を強くもたざるを得ない。本書が大学改革・大学評価におけるPDCAサイクル導入の是非をめぐる議論のきっかけとなれば幸いである。
目 次 | はじめに 序章 3つの誤読の背景 第1章 大学の質とモノの質の誤読 第2章 品質管理としての成立過程の誤読 第3章 目標管理の誤読 終章 対話・了解型評価活動の提案に向けて <執筆者紹介> |