大学評価学会設立にむけて(一次案)

1)設立趣旨
 2004年4月1日より、文部科学省によって認証された評価機関による大学評価が法的に義務づけられることになりました。これに対応すべく各大学では、学内規程の制定に向けて議論するなどしています。大学評価は、教育・研究のありように直結するものです。また、学問の自由、それに基礎づけられた大学の自治の根幹に関わるものです。
 認証評価機関による評価、その他の評価機関による外部評価を含め大学評価は、今後の大学の帰趨を決する大きな課題と言えますが、現在すすめられようとしている評価機関等による評価には、経済的視点が一面的に強調されており、大学評価本来のありようについての議論は軽視されていると言わざるを得ません。今まさに大学評価の具体的ありようをめぐり議論する場の必要性が切望されています。
 大学評価の中身は、大きく教育、研究、経営管理という三つの分野から構成されます。この分野はさらに組織的に分化され、学部、学科、専攻、コースなど、大学院研究科、研究機関などが評価の対象になります。そして、これらから総体としての大学全体の営みを評価対象とすることになります。
 このことは、これまで狭い専門の領域に閉じこもりがちであった教育・研究者、事務(行政)職員に新たな課題を提起していると言えます。自らの教育・研究から大学経営全体のありようについて、その社会性、歴史性、国際性、さらに地域性、市民性などの視点(方法)が喚起されようとしています。それは、教育・研究の多分野・異分野間相互の関わり、またそれと関わっての大学経営という視点からの検討などです。
大学および大学人が、自らの主体性を確立し、学問の自由と大学の自治の現実的・具体的担い手となるには、こうした大学評価に関する議論を行うことが避けて通れない課題となっていると言えるでしょう。その議論の中身は、学際的領域であるとともに、評価をとおして大学総体を議論の対象とするものです。
 今日、大学評価は、大学が社会的役割・貢献を行う上での必須条件となっています。社会的役割・貢献は、経済的のみならず社会的な広がりをもった多様で多元的な価値視点から求められるものです。この多様で多元的な視点から大学評価を行うことが必要となっているのです。本学会は、「大学評価」そのものを相対化し、学問的検討の対象とするため、大学評価学(論)という分野を設けたいと考えます。これは、従来からの大学論、高等教育論と重なるとともに、独自に評価という視点から大学を論ずることを学会の目的とするということです。
 さらに、大学評価を学問研究の対象とするということは、単に評価の中身を論ずるだけでなく、評価の基準を具体的に提示することが求められます。今後、認証評価機関、外部評価機関による評価は具体的に行われ、この中身が大学での教育、研究、経営のありように大きく影響することになります。大学評価は、大学および全大学人の生死に関わる課題です。それぞれの大学人が自らの専門および職務をもちつつ、大学における教育、研究、経営を広く議論する場として大学評価学会を設立します。

2)研究課題
イ)大学(教育、研究、経営)の社会的役割・貢献に関する研究を行う。

@ 大学評価のための大学原論および評価基準の研究
A 各国における大学評価および評価基準の研究
B 日本における大学評価および評価基準の研究
C 個別大学(研究科、学部、学科などを含む)の評価および評価基準の研究
D @〜Cの研究とともに大学の社会的役割・貢献の評価を行う。この場合、経済的視点のみならず社会的、国際的、市民的、地域的などの視点、同時に民主主義・平和、人権、ジェンダー、環境問題、貧困問題等といった21世紀の社会が直面する課題も含め、評価および評価基準を研究する。学生の発達保障を可能にするような教育・研究のありようについての研究を重視する。

ロ) 国連人権規約およびユネスコの21世紀高等教育宣言などの国際的文書で示されている国際的基準を検討し、これにもとづく大学評価および評価基準を研究する。
ハ) 認証評価機関、外部評価機関等の評価のありようを研究する。
ニ) これらの大学評価の研究成果にもとづいて具体的な基準を議論し、遂次提示する。
ホ) 以上の研究課題をすすめるために、広く市民の参加を求める。

3)学会運営
イ)学会運営規約を別途定める。2月上旬には規約案をまとめる。
ロ)設立大会で運営委員会を設ける。
ハ)設立大会までの期間、学会設立準備委員会および準備事務局を設ける。準備委員
を10名前後とし、準備の都合上関西を中心にお願いする。
ニ) 設立準備事務局は龍谷大学・重本研究室におく。なお、現在、準備事務局メンバーは7名。

4)当面のスケジュール
イ) 2004年1月中旬に発起人依頼書面を200名ほどに郵送。今月末までに発起人50名〜100名を確保する。
ロ) 2004年2月上旬に全国の大学関係者(教員、事務職員)および大学以外の方々に学会参加を求める書面を郵送。
ハ) 2004年3月28日(日)13:30から設立大会を開く。会場はキャンパスプラザ京都(JR京都駅前)。
ニ) 2004年1月から月例研究会を開催するとともに、2004年秋に公開研究集会(シンポジュウム)を開催する。第1回月例会1月30日(金)13:30〜龍谷大学にて。
以上